眠く感じる、でも寝付けない

心血虚にいたる過程

不眠(睡眠障害)には、入眠障害、熟眠障害、中途覚醒、早朝覚醒などがあり、共通しているのは睡眠の総量(質×時間)が少ないこと。これにより日常生活に支障をきたしたものが「不眠症」です。

東洋医学的に不眠(不寝、不得臥)には、いくつかのタイプが考えられます。しかしどのタイプであっても、慢性的な不眠は、最終的に心血虚(心血不足)の状態に至っています。急性の不眠の場合、心血は不足していなくても、心(しん)において「血」の働きが十分でないことが原因となっているものも少なくありません。

※「血」と、現代医学の血液とは、その働き(概念)において完全に同じものではありません。

●肝火上炎から心血虚となって不眠

肝火の上炎から肝心火旺となり不眠、もしくは、その後心神不寧、心血虚となり不眠。

●心腎不交(腎陽虚、腎陰虚)から心血虚となって不眠

老化などにより腎虚となり、腎陽が心陽を補うことができず、心において血の働きが不活発(心血虚)となり不眠。または、腎陰の不足(腎陰虚)により、心陰(心血)補えず、心血虚により不眠。

●脾陽虚から

脾陽虚のため体内で気血水の巡りが悪く、心に血が届かず不眠。

●痰湿から

体内に生じた痰湿が巡りを悪くし、心に血が届かず不眠。痰湿は中焦にあって、心と腎の交通の邪魔をする。

体が冷えていると寝つきが悪くなる

慢性的な「冷え症」のことを陽虚といいます。先天的なものであれば腎陽虚、飲食物の不摂生が原因となっているのであれば脾陽虚として対応します。冷え症の人がの多くが、両方の陽虚をもっています。

心に血という物質を届けるためには、陽の働きが必要です。つまり下焦(腎)、中焦(脾)が冷えていると、上焦にある心の血が不足します。この場合、血を受け取るための心を補うことと合わせて、腎や脾の陽を補わなければなりません。冷たいものの常飲、常食は脾の陽を損傷してしまいます。

現代医学的にみても、冷え症の人は睡眠の総量が少ないことがわかっています。体は上がった体温が下降するときに眠気を催します(入眠のためには体温の下げ幅が必要)。冷え症の人は、もともと体が冷えているために、それ以上体温が下がらず、なかなか眠りに入っていくことができません。不眠症改善のために規則正しい生活が大事である、その理由の一つは、規則正しい生活を送っていると、決まった時間に体温の変動が起こるからです。

うまく入眠するために、就寝の1~2時間前に入浴によって体温を上げておくことが有効です。

規則正しい生活、入浴、そして運動

規則正しい生活、入浴時に湯船に浸かる、冷たいものを避けるといったことと合わせて、不眠解消のためには何といっても運動が効果的です。運動は体内において熱をつくり、陽を補います。また疲れることで、体は眠りを強く求めるようになります。とはいえあまり遅い時間の激しい運動は、場合によっては眠りの妨げになることもありますので注意しましょう。

精神の興奮や疲労

気持ちが落ち着いていないとうまく眠ることができません。東洋医学では、人間の感情に「怒、喜、思、憂、悲、恐、驚」のおおよそ七つがあるとし、どれも過ぎれば不眠の原因となります。

先述の通り、心血の不足、もしくは心において血が正しく機能しないことで不眠になります。これらの感情は、過ぎれば、肝火上炎、心肝火旺、などの言葉(中医学用語)からも想像できるように、体の上の方にエネルギーを偏らせます。つまり心に血が充満していると、とらえられなくもありません。しかしこのような場合、血が心においてうまく(正しく)機能することができません。例えるなら、ギアがかみ合っておらず、アクセルを踏んでも、車が進んでいかないような状態です。

また、便秘を例にとると、腸の蠕動運動がまったく(ほとんど)起こらなかったり、弱すぎたりすれば便秘(弛緩性便秘)となります。しかし腸が痙攣を起こすような異常な運動を起こしても、便秘(痙攣性便秘)となります。

心おける血の働きというのは、腸に蠕動を行わせる自律神経ようなものであって、その働きは過不足なく正しいものである必要があります。

馬込沢うえだ鍼灸院






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kiichiro

鍼灸師。東洋医学について、健康について語ります。あなたの能力を引き出すためには「元気」が何より大切。そのための最初の一歩が疲労・冷え症・不眠症をよくすること。東洋医学で可能性を広げられるよう情報を発信していきます。馬込沢うえだ鍼灸院院長/日本良導絡自律神経調整学会会員/日本不妊カウンセリング学会会員//日本動物愛護協会会員

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