高めた治癒力をキープする
恒常性維持
生きている人の体には、恒常性を保とうとする力(恒常性維持機能)が働いています。熱も、咳も、湿疹も、炎症が起きるのも、すべては恒常性を保とうとするためです。だから「症状」を無理に押さえつけるのはよくありません。症状がつらく、うっとおしいと感じたら根本をよくする必要があり、根本がよくなった結果して症状も治まるのが理想です。だからといって、症状を取ることを目的とした、いわゆる「対症療法」に意味がないわけではありません。痛み、痒み、不眠などの症状は治癒力を低下させますから、とりあえず症状を取り除くことも大事なことです。しかし対症療法は対症療法でしかありませんから、一方で必ず本治療を行う必要があります。
上昇気流
生きていればケガや病気をしても治るのがふつうです。恒常性維持機能とは、「自然治癒力」と言い換えることができます。これは上昇気流の中にある凧のようなもので、何事もなければ、凧は上昇気流に身を留めておくことができます。しかし、凧はストレスによって上昇気流から外れることがあり、上昇気流から外れてしまったときが体調不良や病気、地面に落ちてしまったら死というこになります。そうならないために、凧が完全に墜落してしまう前に、上昇気流に戻すための手段が治療ということになり、鍼灸もその一つです。
世の中、常に平穏無事というわけではありません。私たちを取り巻く環境はストレスがいっぱいです。体力のある人ない人、いろいろ、上昇気流に留まることにあまり労を要さない人もいれば、外れやすい人もいます。また、若いころは大丈夫だった人も、「養生」を怠るとすぐに体調を崩してしまうということあります。
予防養生としての鍼灸
症状が表れたら、それは体が発しているメッセージであるととらえて早めに対処する、危機的状態に陥ってしまったら、恒常性維持機能や自然治癒力を高めて何とかそこから脱出する、凧でいえば、地面に落ちてしまわないように何かしらの手を打つのが重要です。しかし、自分の体を一番大切なものであることを考えれば、病気にならないのが最良であるのはいうまでもありません。事態が悪化してからではなく、上昇気流の中にいるために鍼灸を受けてください。