㋮ただ痛がるだけでなく腰痛について考える5

東洋医学

急性腰痛

腰痛を引き起こす運動器疾患もしくは腰痛因子と呼ばれるものには、脊椎分離症、脊椎すべり症、椎体圧迫骨折、変形性腰椎症、不良姿勢などが挙げられますが、これらが決定的因子になるわけではありません。最終的には、 椎間関節の炎症(椎間関節性腰痛) 、筋筋膜の炎症(筋筋膜性腰痛)、もしくは患部の血流停滞(瘀血性腰痛)によって痛み(鈍痛)が発症します。 また、椎間関節の不適合が生じる背景に筋筋膜の問題がある場合もあり、どちらか一つだけの病態とは限りません。筋や筋膜や損傷の原因には、筋疲労が関係している場合が多く、痛みを起こす疲労物質の停滞は冷えによる血流障害によって悪化します。さらには、冷えや疲労、組織機能の低下には睡眠が不足が大きく関与しています。

急性腰痛の鍼治療

〇急性椎間関節性腰痛

椎間関節に生じた炎症により脊髄神経後枝興奮。

痛む部位から45度内上方の背部一行(椎骨棘突起傍ら)の圧痛を確認します。さらに自覚痛と圧痛部に撮痛があれば、より本症である可能性が高くなります。

●鍼灸治療

背部一行上の圧痛点が治療点ということで、そこに刺鍼します。

〇急性筋筋膜性腰痛

腰部筋表層部に生じた炎症。じっとしていればひどく痛むことはありません(筋の過収縮による鈍痛)が、体動によって痛みはひどくなります(過収縮した筋が伸長するときに生じる鋭痛)。

背部一行の圧痛、撮痛等の検査により、椎間関節性の腰痛でないと判断した場合、筋筋膜性腰痛を疑います。

●鍼灸治療

障害部位として最も多いのがカリエの腰三角部(L5、S1棘突起と上後腸骨棘を結んだ線の中央)。上半身の重さが一番かかるのがここです。他周辺の硬結、圧痛、コリや張りに刺鍼(置鍼や運動鍼)を行います。

鍼先が筋層内に直接当たらない皮膚表面の刺鍼であっても、筋と同じ脊髄分節に入り、筋の緊張を和らげます。

鍼灸治療が効かない

〇スパズムについて

スパズムとは、損傷によって生じる筋肉の痙攣のこと。これは筋肉を守ろうとする反応のため、強すぎるスパズムが起きているときは鍼灸が効きません。筋組織の修復に伴い痛みがやわらぐのであればいいのですが、損傷はそのままで痛みや痙攣のみを取ってしまうというのは、体にさらなる負担が掛かってしまうこともあり、体はこれに対応しません。理想をいえば、動けないほどひどい急性の痛みがあるときは、動かない(休む)のがいいということです。

〇腰痛とは、痛いの腰ですが、その痛みを認識するのは大脳です。精神的ストレスが大きく関与している場合、患部へのアプローチだけでは痛みが治まらないケースがあります。

慢性腰痛

〇慢性椎間関節腰痛

治療:背部一行刺鍼

〇慢性筋筋膜性腰痛

治療:外志室

急性腰痛が表層筋の障害であるのに対して、慢性腰痛は表層筋(多裂筋、棘間筋、最長筋、腸肋筋)の障害と深層筋(大腰筋、腰方形筋)の障害の二つが考えられます。

深部の筋筋膜(胸腰筋(腱)膜)を刺激。

「ただ痛がるだけでなく腰痛について考える6」に記載しますが、外志室刺鍼には、腰部神経叢(T12~L4)を刺激する目的もあります。これは、腰神経叢から分枝した神経は、下腹、陰部、大腿部(内側、外側、前面)を支配するからです。

〇瘀血性腰痛

腰部から仙部の血流が悪い(静脈障害)とそこに疲労物質が溜まり、腰が重だるい感じになります。

治療:委中 

腰部局所(腸骨静脈支配領域)の治療に合わせて、委中(膝窩静脈)を刺激することで、 瘀血の改善が期待できます。 腸骨静脈と膝窩静脈はつながっているため。

中央林間うえだ鍼灸院

ただ痛がるだけでなく腰痛について考える6