胃腸の調子が悪いときに現れるコリ

東洋医学

内臓疾患の体表所見

内臓に病変がある場合、体表に次のような所見が認められます。内臓痛であれば交感神経反応として、皮膚のざらつき、冷え、発汗、関連痛なら体性神経反応として、運動性のものであれば、硬結、コリ、知覚性であれば圧痛や撮痛といったものがみられます。

〇交感神経反応

皮膚のざらつき、冷え、発汗

〇体性神経反応

硬結、コリ

内臓に病変があると、交感神経の求心性神経路により、中枢性に刺激が伝わり、遠心路で経由で効果器(皮膚、血管、汗腺、筋肉etc)に伝わります。遠心路が交感神経線維すなわち「内臓痛」の場合と、体性神経線維すなわち「体性痛」の場合があり、内臓が所属する脊髄分節上の皮膚や筋に病的所見を呈しますが、交感神経反応と体性神経反応の所見は異なります。皮膚のざらつき、冷え、発汗は見つけにくいため、硬結やコリは重要な治療点となります。

内臓病変は交感神経球心路を興奮させると同時に、灰白交通枝を経由して脊髄神経を興奮させます。つまり内臓病変であっても体性神経興奮となります。興奮の度合いが閾値以下であっても撮診法によって、体壁の所見を見つけやすくなります。

また患者さんの自覚症状として、それが内臓病変からのものであったとしても、多くの場合、体性神経反応(硬結・コリ)が主訴となります。

●内臓病変が体壁現れたときに痛む部位

内臓病変が体壁に表出した場合、痛みが出やすい部位があります。これは末梢神経が深部から表層に出てくる部分で、以下の2つです。

①体の前面では、胸骨の付着部から外方に3~4cmのところを胸骨上部から恥骨まで。これは脊髄神経の前皮枝で、胸部を胸骨点、腹部を腹部点といいます。

②脇の下の前方を第12肋骨まで。脊髄神経外側皮枝(肋間神経)で、外側点といいます。

体の後面では、脊髄神経後枝で、脊柱棘突起の外方3~4cmのところ(兪穴)。

〇副交感神経反応

内臓は交感神経だけでなく副交感神経の支配も受けています。副交感神経が働くと、唾液腺分泌、肝臓グリコーゲン合成、胃腸管の平滑筋収縮・分泌促進、膵液分泌、インスリン分泌といった生体反応が起きます。しかし上腹部痛をもたらす内臓は交感神経優位で、副交感神経反応はあまりありません。内臓の副交感神経反応の主体は迷走神経(頭部副交感神経)です。体表から副交感神経を刺激できる点は、ヘソから上であれば耳介、頸動脈胴部、ヘソから下であれ仙部副交感神経(骨盤神経)が走行する八髎穴があります。※上腹部痛に対して有効な副交感神経反応点への刺鍼は前者2か所。仙骨神経が支配しているのは、下部消化器、膀胱、生殖器etc。

〇横隔膜神経反応

横隔膜に隣接している臓器(肺下部、心臓、胃、肝臓、すい臓)に異常があると、その異常は横隔膜に波及します。本来の内臓症状だけでなく、頸肩や肩甲間部のコリ、心窩部痛、中背痛を起こしやすくなります。肝臓は知覚に鈍感な臓器で、肝臓自体の反応よりも横隔膜反応の方が強く出ます。

ストレスが消化器に及ぼす影響

胃や腸などの消化器の働きは自律神経によって営まれています。胃腸管は交感神経優位時に平滑筋弛緩、胃酸分泌抑制、副交感神経優位時には平滑筋収縮、胃酸分泌促進となります。通常であれば、戦闘モードのときに交感神経優位、リラックスモードのときに副交感神経優位となります。

戦闘モード → 交感神経優位 → 平滑筋弛緩、胃酸分泌抑制、つまり消化活動抑制

●病的状態:胃壁を守る胃酸が少なすぎ、胃粘膜の抵抗が弱まる → 消化不良、食欲不振、膨満感etc

リラックス →副交感神経優位 → 平滑筋弛緩 、胃酸分泌促進、つまり消化活動促進

● 病的状態:胃酸が多すぎる  → 胃炎、胃潰瘍etc

ストレスを受け続け、交感神経が活動しっぱなしの状態になると、バランスをとろうと副交感神経が活動し始めます。このままストレスから解放されないでいると、交感神経、副交感神経の両方が同時に活動するという病的状態になります。そのため多量の胃酸が分泌され、胃痛や胃潰瘍を引き起こすことになります。

上部消化器疾患に対しての鍼灸

体壁に現れるコリや硬結(体制神経反応)や皮膚のざらつき、冷え、発汗のあるところ(交感神経反応)が内臓病変の局所治療の治療点となります。現れやすい部位は以下の通りです。しかし先述の通り 交感神経反応 である 皮膚のざらつき、冷え、発汗 などは見つけるのが困難なため、 実際は体制神経反応であるコリや硬結が治療点となります。

〇内臓病変刺鍼による治効機序

●皮膚のざらつき、冷え・発汗のあるところ(交感神経反応)に刺鍼した場合

刺鍼 → 知覚神経 → 遠心性内臓神経 → ターゲットとなる臓器が交感神経過多状態を鎮める → 

消化機能が正常に戻る。

例)胃腸管平滑筋が弛緩していたものが通常状態に戻る → 平滑筋収縮 → 消化機能正常

  胃腸管分泌抑制されていたものが通常状態に戻る  → 分泌行進  → 消化機能正常(胃酸減少改善)

●硬結、コリ(体性神経反応)に刺鍼した場合

刺鍼 → 知覚神経 → 遠心性内臓神経 → ターゲットとなる臓器が交感神経過多状態を鎮める  →

消化機能が正常に戻る   

一方で遠心路にて、体性神経(運動神経)が働き、硬結・コリが消失

●耳介肺区、頸動脈洞(副交感神経)を刺激した場合

刺鍼 → 副交感神経過剰状態が治まる → 消化機能が正常に戻る

例)胃腸管平滑筋が収縮していたものが通常に戻る → 平滑筋弛緩 → 消化機能正常

   胃腸管分泌促進していたものが通常状態に戻る → 分泌抑制  → 消化機能正常 (胃酸過多改善)

〇胃の六灸(膈兪、肝兪、脾兪)

●膈兪:第 7胸椎棘突起の下外側1.5寸

●肝兪: 第 9胸椎棘突起の下外側1.5寸

●脾兪:第11胸椎棘突起の下外側1.5寸

※ボアス点(肝兪、胆兪、脾兪、胃兪辺り)

●胆兪:第10胸椎棘突起の下外側1.5寸

●胃兪: 第12胸椎棘突起の下外側1.5寸

胃の六灸やボアス点(腹部では中脘)の深部には、消化管を支配する自律神経が密になり腹腔神経叢を形成しています。そのために内臓の病変が現れやすく、また有効な治療点でもあります。

〇小野寺臀部点

腸骨稜より下外側3㎝

上殿神経支配領域、坐骨神経と起始が同じ脊髄分節であるため、 押圧した際に放散痛が坐骨神経支配領域に広がります。

〇左胃倉(胃経)

第11胸椎棘突起の下外側3寸(脾兪の外側1.5寸)

〇巨厥

胸骨体下端の下2寸

〇中脘

胸骨体下端と斎を結んだ中点

〇左梁門

中脘の左側3寸

〇プグリッシ・アレグラ点(不容⦅胃経⦆)

副胸骨線(胸骨外縁のラインと乳頭線の中間を通る線)と肋骨弓の交わったところ

※十二指腸の反応点は右梁門

〇その他

●足三里:外膝眼の3下寸

●梁丘:膝蓋骨外上縁の上方2寸

●蘭尾:足三里の下2寸

局所の刺鍼と合わせて、内臓が異常を起こす背景にも目向け選穴、治療していくことが重要です。

※沢田流聞書には、胃酸過多には天髎、肺兪、膏肓が効くとある。

● 天髎:肩甲骨上角

●肺兪:第3胸椎棘突起下外側1.5寸

●膏肓:沢田流では通常の神堂(第5 胸椎棘突起下外側3寸 )に相当。通常の膏肓は 第4胸椎棘突起下外側3寸 

中央林間うえだ鍼灸院