㋮神経の話
神の経と書いて神経。「経」は立ての流れをあらわします。ちなみに横の流れは絡。東洋医学において「心は神を宿す」といい、東洋医学の心(しん)には、心臓としての働きだけでなく、脳としての働きがあります。 現代医学に当てはめた場合、 神経とは、脳からの指令を各器官・組織につたえる経路と捉えることができます。
現代解剖学的に神経は、次のように分類されます。
神経の分類
〇中枢神経
神経の働きの中枢となるのは、脳と脊髄からなる中枢神経です。脊髄からは脊髄の枝である末梢神経(感覚神経と運動神経)が伸びていて、感覚神経によって体の各部分(抹消)からの刺激を受け取り、統合し調整した新しい興奮を、運動神経を通じて抹消へ送り出します。※脳については別途記載
〇末梢神経
末梢神経は求心性と遠心性の2つに分けられます。求心性神経は抹消からの刺激を中枢へ伝達する神経で、感覚神経のことで、内臓の状態を中枢へ伝える内臓求心性(感覚性)神経もこれに含まれます。
遠心性神経は中枢からの興奮を抹消に伝える神経であり、筋の運動を支配する運動神経と、腺分泌を支配する分泌神経(自律神経)とがあります。
末梢神経には、脳に出入りする脳神経と、脊髄に出入りする脊髄神経があります。
脊髄神経
脊髄神経は、脊髄に出入りする抹消神経で31対あります。神経が出入りする高さによって、5群に分けられています。
頚神経: 8対
胸神経:12対
腰神経: 5対
仙椎 : 5対
尾椎 : 1対
脊髄の前根を通る運動線維と、後根を通る感覚線維が合して脊髄神経はつくられます。後根には脊髄神経節があり、感覚性の興奮を伝える神経細胞の細胞体が含まれます。椎間孔を出た脊髄神経は前枝と後枝に分かれ、さらに前肢は、体幹側面の筋に分布する枝(運動神経)、体幹側面の皮膚に分布する枝(感覚神経)、体幹前面の筋に分布する枝、体幹の側面の皮膚に分布する外側皮枝、体幹前面に分布する前皮枝、手足の皮膚と筋に分布する枝に分かれます。後枝は背中の皮膚(内側皮枝、外側皮枝)と脊柱起立筋に分布します。
胸神経前肢(外側皮枝、前皮枝を含む)の12対を「肋間神経」と呼びます。
体幹側面(前鋸筋、肋間筋、 外腹斜筋、内腹斜筋 など)を支配する運動神経には、長胸神経(前鋸筋)、肋間神経(肋間筋)、腸骨下腹神経(外腹斜筋 、 内腹斜筋)があります。
経穴でいえば、背部一行線上にある挟脊穴は、脊髄神経前後枝を刺激していることになり、椎間関節性腰痛などに用いられます。また肋間神経痛や帯状疱疹に対して、同じ脊椎レベル(高さ)の 背部一行線 は治療点となります。 内臓疾患治療の際に多く用いられる背部二行線上に位置する背部兪穴は、胸神経(肋間神経)の内側皮枝刺激です。