アトピー性皮膚炎に東洋医学的で対応する
脾肺を強くする
さまざまな病気や症状は、体内を巡る気および血・水が弱くなるもしくは停滞することによって生じ、体が本来の姿を取り戻すためには、気血水の状態を元に戻さなければなりません。現代医学的病名である「アトピー性皮膚炎」もまったく同様です。アトピー性皮膚炎の病態を正常にし、症状を緩和させるためには「衛気」「営気」および五臓の脾と肺の観点からの対応が必要です。
衛気、営気の働き
〇衛気とは
皮膚体表面において外邪の侵入を防ぐ役割を果たす気。肺との関りが深い。
〇営気とは
営気とは、生命を維持、活動させるための中心となる気。脾との関りが深い。
脾、肺の働き
〇「脾」の働き
●飲食物より生命維持に必要なエネルギーを生み出す
●エネルギーを生み出すことによって体を温める
●体の加湿機能
●現代医学の消化器、消化管の働きを担う
●六腑の「胃」と表裏の関係にある
〇「肺」の働き
●呼吸によって清気(酸素)を体内に取り入れ、濁気(二酸化炭素)を排出する
●咳や痰によって外邪の侵入を防ぐ
●皮膚表面において、外邪の侵入を防ぐ
●発汗によって体温をコントロールする
●六腑の「大腸」と表裏の関係にある
●現代医学の呼吸器の働きを担い、皮膚も「肺」に含まれる
皮膚は体内と体外を隔てるバリアで、消化管の胃壁や腸壁などもまたバリア的な存在です。その防御網であるバリアをかいくぐって侵襲したアレルゲン物質が皮膚に影響を与え、症状として現れたものがアトピー性皮膚炎です。つまり免疫や防御を強化するためには脾肺の機能を高めることが必要で、アトピー性皮膚炎のアレルゲンが食べ物によるものが多いことを考えれば、とくに着目すべきは「脾」ということになります。
五行でいえば、脾は土、肺は金の性質をもちます。脾と肺は母子の関係にあり、脾土により肺金は生まれます(土生金)。体の防衛と消化吸収、代謝、産熱は一体であり、分けて考えることはできません。
脾の働きが低下(脾虚)すれば、衛気も営気も産出量が減り弱くなってしまいます。衛気が弱くなれば細菌や感染因子などの外邪の侵入を容易に許してしまいます。
病因
病気を引き起こす因子には次のようなものがあります。
内因:怒・喜・思・憂・悲・恐・驚
外因:風・寒・暑・湿・燥・火(熱)
不内外因:暴飲暴食、過労、房事、外傷、ウィルス
アトピー性皮膚炎は、たんぱく質といった食物などの因子をベースとして起こり、ストレスによって増幅します。乳幼児は「脾虚」によるものが多く、成人は脾虚に加えて、肝火や心火といった精神的ストレスも大きな要因となります。
成長するにつれてアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が消失していくこともある一方で、脾虚タイプだったものが、肝火心火をともなうタイプへとなっていくケースも多くあります。
冷えとの関係
口から入った食べ物は胃で消化、腸で吸収されます。このとき消化管は、消化物からアレルゲン性をなくし、体にとって有益なもの(栄養素)を取り込み、異物を排除するということを行っています。消化管が正常に機能しないと、吸収される形になってないものを吸収してしまうことになり、これがアレルギー反応を起こさせる「アレルゲン」となります。消化管の機能低下の大きな要因に、消化管をはじめ体の「冷え」があると東洋医学ではとらえています。また乳幼児の場合、消化管が未発達で食べ物をうまく分解できず、体にとって必要なものと不必要なものとの選別ができないために、食物アレルギー起きるのではないかと考えられています。
アトピー性皮膚炎を治すために
アトピー性皮膚炎を治すためには、誘発因子の体内への侵入を防ぎ、精神的ストレスを減らすことと同時に、本質的な問題として「脾肺」を強くするといった体質の改善を図らねばなりません。「冷え」に対して、またストレスによって疲れた心身をリラックスさせ体調を維持するために、入浴時には湯船にしっかりと浸かりたいものです。しかしそれによってかゆみがひどくなるようであれば、湯船で温めるというこをとは止めておいたほうがいい場合もあります。体は外からだけではなく、内からも温めることができますから、冷たいものなど冷やすものは避け、温かいものや温めるものを多く取るようにしましょう。
ステロイド治療薬
強い抗炎症作用をもち、かゆみや皮膚の湿疹といった症状を抑えるステロイド剤は、アトピー性皮膚炎の根本に働きかけるものではなく対症療法でしかありません。その副作用や、いったん使用を中止するとリバウンドが起きる可能性がある、などのことから使用の賛否が問われています。
アトピー性皮膚炎と鍼灸
先に述べました通り、アトピー性皮膚炎の本治(根本治療)法は脾肺の機能を高めることです。鍼灸によって脾肺にアプローチし、アトピー性皮膚炎を治療して行きます。
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