糖尿病の予防改善に東洋医学を生かす
怖いのは合併症
糖尿病とは、インスリンの分泌量が減る、もしくはインスリンに対する感受性が鈍くなり血糖値が下がらなくなったもので、そのままの状態が続くと合併症を引き起こします。遺伝体質的にインスリンが分泌されないために起こるⅠ型と、過食、運動不足、肥満などの生活習慣に寄り起こるⅡ型があります。
糖尿合併症
糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害といったものが糖尿病により起こる合併症です。
●糖尿病性網膜症
高血糖の状態が続くことで、網膜の血管が詰まったり破れたりして、その結果視界が狭くなったり、網膜に十分な栄養が届かなくなったりします。視力低下が低下し最悪の場合、失明に至ります。
●糖尿病性腎症
糖尿病性腎症は、腎臓の働きが低下することで老廃物が体外に排出されなくなる尿毒症を引きお起こします。これにより水分や血圧をコントロールできなくなり、体にさまざまな症状が表れます。死に至ることもあり人工透析が必要になります。
●糖尿病性神経障害
高血糖により末梢神経が侵され、最初足の先や足の裏に「痛み」や「しびれ」を感じるようになります。神経障害が進行すると逆に感覚が鈍くなりケガに気づきにくくなり、また動脈硬化により血流が悪くなるため傷がなかなか治らないといったことが起きます。
東洋医学では消渇
東洋医学に「糖尿病」という病名は存在しませんが「消渇」がそれに該当します。消渇とは体内に熱がこもることで口や喉が渇きそれによって多飲するため、多尿となります。このような水分を異常に欲しがる症状は陰虚証を表しています。口の渇きや水分を欲しがるものは「上消」、脾胃(消化器)に熱がこもり汗をかくなどは「中消」、頻尿、尿の混濁の症状は「下消」に分類することができます。
始めは肥満
食べすぎ飲みすぎや運動不足からなるⅡ型糖尿病の人の多くは肥満です。インスリンが正常に機能しているうちは、インスリンによって栄養が取り込まれるため太ります。これは太ることで糖尿病のリスクを減らしていると考えることもできます。しかし病状が進んで、栄養が細胞に取り込まれなくなると次第に痩せてきます。日本人は体質的にインスリン感受性が高くないため(インスリン抵抗性のため)、糖尿病になりやすいといわれています。このような、体のすみずみに酸素や栄養が行き渡らなくなった状態は陽虚症ととらえることができます。
東洋医学の古典には、消渇の病因には、飲食不摂、情志失調が挙げられています。飲食不摂とはアルコールや甘いものの取り過ぎのことで、情志失調とはストレスによって気持ちが停滞がすることです。情志失調自体にインスリンの分泌不全やインスリン抵抗性を起こす作用があり、またストレスを解消しようと過度に飲食してしまいます。
糖尿病の予防改善
運動療法、食事療法、薬物療法のいずれもが大切です。薬物に関しては主治医とよく相談してすすめていってください。
●食事療法
毎食カロリーを計算するのはとても大変で続かないという話を聞きます。摂取カロリーを減らし、ひいては血糖値を下げることが目的ですから、厳密にカロリーの計算された食事である必要はないと考えます。自分が食べている食事は「これくらいのカロリー」があるという感覚を身に着けるために、数日間はカロリー計算を自分でやってみるのは意味のあることです。
●運動療法
適度に運動することは、インスリンの分泌を促したり、インスリン抵抗性を予防したりするのにとても重要です。歩く、走るなどの有酸素系の運動と筋肉を発達させるためにウェイトトレーニングの両方ができれば理想ですが、とにかく大切なのは運動を習慣化することです。できるだけ歩くようにしましょう。
●ストレスを溜めない
先に述べましたとおり、ストレスはインスリンの分泌不全やインスリン抵抗性を起こします。また食べることによるストレス解消は、糖尿病に対して本末転倒となってしまいます。自分なりの方法でストレスを解消すること重要で、とくに長い目でみたときに不可欠なものといえるでしょう。
冷えと糖尿病
先述のとおり、糖尿病は陰虚の面と陽虚の面との両方をもっています。糖尿病を予防改善するための運動は同時に「冷え」を解消するものでもあります。運動による体脂肪現象が血糖値を正常にし、体脂肪を減らすために行うことが冷え症の改善につながります。
糖尿病と鍼灸
鍼灸では、上消、中消、下消のそれぞれに応じて治療して行きます。上消に対しては主に、上焦部の熱を清熱潤肺をはかり、また心火を下ろします。中消には、脾胃を補い生津をはかります(水の状態をよくするという意味)。下消には、補腎益陰、平肝降火をはかります。このような鍼灸治療により、運動療法、食事療法がより効果的なものになります。