心は大切。心血虚、心陰虚
心(しん)の働き
心の働きは「神を蔵する」ことと、「血脈を主(つかさど)る」こと。神を蔵するとは、精神活動を行うという意味、血脈を主るとは、血液を全身に送り届けるという意味です。現代西洋医学的には、「神を蔵する」のは大脳の、「血脈を主る」のは心臓の働きと考えられます。
心は、他の四臓(肝・脾・肺・腎)や六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)などの働きを統括している司令塔といえます。司令塔の働きが鈍れば、体の各機能が低下、また精神活動が悪くなることで、あらゆる病気になる可能性があります。
心血虚、心陰虚
心血虚とは、心において血が不足した状態。心血は陰的な性質(心気は陽的な性質)をもち、心血によって心の働きが過剰にならないよう抑制されています。心血が充足していれば、こころは平静で、穏やかな気持ちでいられますが、心血が不足すると「心神不寧」といってイライラしたり、眠れなくなったりします。
血は全身の「陰」に属し、心陰が減ることで相対的に心陽が増えた状態が「心陰虚」。それに対して心の陽が旺盛になっているのは、陰が減っているわけではなく、通常の量は確保されています。しかし、過度に興奮することで心陽が増えてしまったものが「心火亢進」や「心火独亢」です。
心陰虚(相対的陽盛)、心火亢進(絶対的陽盛)のどちらであっても、こころが落ち着かない「心神不寧」の状態になります。不眠を例に挙げると、「寝付くことはできるが眠りが浅い」といった心陰虚の不眠に対して、心火亢進による不眠は「眠気を感じない」といった特徴があります。
陰と陽は、通常バランスが取れているものです。たくさん活動すれば、その日の夜はグッスリと眠れます。本来であれば、陽(活動)のエネルギーと、陰(睡眠)エネルギーは「10対10」の割合です。昼間に活動すれば、夜はその活動に見合うだけの睡眠が得られるということ。陽から陰へとバトンが受け渡されると、そこで陽と陰とが入れ替わり、活動から睡眠へと移っていきます。しかし、陰が不足していると、陰は陽からのエネルギーのすべてを受け取ることができません。受け取れなかったエネルギーは陰へ変換されず、陽のままということになってしまいます。
この陰に対して過剰となった陽により、眠りが浅くなったり、自分の意に反して睡眠時間が短くなったり(途中覚醒や早朝覚醒)します。それによって不都合を生じないのであれば問題ありません。しかし、日中に眠くなる、イライラしやすくなる、うつのような状態になる、というのであれば、血や陰を補うことが必要になります。
補血、補陰
血虚・陰虚の状態を元に戻すための具体的な方法としては、なんといてっても「眠る」ことですが、血虚陰虚のため眠れないといった場合はどうしたらいいのでしょう?
寝よう寝ようと思っても、眠れるものではありません。このようなときは、血や陰に直接働きかけるのではなく、気や陽の機能を活発にするようにします。つまりは運動することです。
自律神経に置き換えて考えると、血虚や陰虚というのは交感神経が過剰になっている状態です。このような場合、交感神経を鎮めるためには、副交感神経を働かせるようにしバランスを取る必要があります。しかし、いくらリラックスしようと思ったからといって、気持ちだけでどうにかなるものではありません。自律神経は振り子のようなもので、振り子を副交感神経の方に振るためには、いったん交感神経側にあるものを、さらに交感神経に振るようにします。するとその後は、振り子は副交感神経の方に振られるというわけです。ここで気を付けなければいけないのは、気持ちがネガティブになるような交感神経過多の状態になってはダメということ。運動するときは、楽しい気持ちで行います。このようなことを繰り返すことで、慢性的血虚(陰虚)を解消することができます。
血や陰を補うことと同時に、血や陰を減らさないことがとても重要です。ストレスは陰血のエネルギーを奪い取ってしまいます。規則正しい生活を送り、ストレスを溜めないようにしましょう。
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