ただ痛がるだけでなく腰痛について考える3
安静にしたほうがいいのか、動いたほうがいいのか
腰が痛いとき、安静したほうがいいのか、それとも動いたほうがいいのか。答えは「楽になるほう」です。
〇安静にした方がいい場合
痛みの原因が明確にわかっているギックリ腰などのときは、傷めた組織が修復されるまでは安静にします。組織は、安静にしたほうが早く修復されます。このとき損傷を悪化させるリスクが高いマッサージも止めておくほうが賢明です。しかし、専属のトレーナーがいるようはアスリートの場合、過去の経験などを生かし状況を判断しながらマッサージを行うことはあります。その点、鍼治療は組織の損傷を悪化させてしまうことはほとんどありません。
〇動いたほうがいい場合
痛むようになってしばらく(結構な時間が)経っているにも関わらず、然るべき検査でこれといった異常が見られないのに、痛みが治まらないとき、こんなときは体を動かしたほうがいいです。これは体のためでもあるし、痛みをつくりだしている脳のためでもあります。組織の新陳代謝のためには酸素と栄養が局所に届くことが必要です。血流によって栄養や酸素は運ばれますから、血行を促すためにも動くことが大切です。仮に組織の損傷はなかったとしても、動くことが「脳内の閾値」を下げることにつながります。
流行の病
説明しましたように脳(こころ)が痛みをつくり出します。例えば神経性胃炎や過敏性腸症候群などは、症状である胃や腸の不調の奥には精神的なストレスがあり、消化器系の疾患というよりは精神疾患(心身症)として扱うことで緩解をみることが多くあります。腰痛も同様で「仮面鬱」と呼ばれるような、こころの病が体の症状となったあらわれる腰痛も少なくありません。鍼灸院(当院)に訪れる腰痛患者さんのほとんどは、病院に行ってもよくならなかった方たちであることをみても、精神的病(心身症)としての腰痛は相当な数であることが示唆されます。
「うつ病」や「うつ」という言葉が認知されるようになり、自分がうつかも知れないと病因やクリニックを訪れる人が増えている一方で、自分がこころの病であることを認めたがらない人が多いのも事実です。一昔前まで多かった「神経性胃炎」の訴えは少なくなっているのは、胃炎の正体が実は神経性のものであった、ということが広く一般に知れ渡ったからといった話があります。
痛みというトンネルを抜け出すためには「腰痛は、腰だけの不調で起きるわけではない」、それを知ることが重要です。
具体的になにをすればいいのか?
①急性腰痛のときは安静。運動やマッサージは避ける。スパズムをとるために鍼治療が有効。急性腰痛の背景には多くの場合慢性腰痛があるため、急性腰痛の予防のためには、ひごろから慢性腰痛を軽減させておく。
②慢性腰痛に対して行うべきは、
・体を適度に動かす → これには体への効果と、こころへの効果がある。
・痛いのは腰だが、「腰が痛い」のは脳で認識するということを知る。
・睡眠をしっかりとしたものにする。
・冷えを改善する → 冷えを改善するとは、言い方を替えれば、交感神経の過活動を正常な状態に戻すとい うこと。
体を動かしたその夜はグッスリと眠りましょう。