㋮ただ痛がるだけでなく腰痛について考える7
神経根症以外で、腰下肢に痛みが出るもの
腰と下肢の間(つまりは骨盤や鼠径部・大転子の辺り)が痛むものに、脊髄神経の前後枝の放散痛、股関節異常、仙腸関節異常などがあります。
〇上部腰椎の前枝痛、後枝痛
ヘルニアや椎間関節の不適合等により、神経根がストレスを受けた場合、後枝興奮であれば、脊柱起立筋周囲~臀部、前枝痛であれば神経走行部位の下肢デルマトーム上に痛みがでることになります。しかし、上部腰椎(L1~L3あたり)というのは力学的ストレスのあまり掛からないため、痛みがでることはあまりありません。
※先述の通り、Th12ーL1間(Th12神経)に関しては、体幹回旋時に力学的ストレスが掛かりやすい部位であるため小野寺臀部点に痛みがでる
※解剖:腰仙骨脊髄神経は、腰部脊髄神経・仙脊髄神経に分けることができ、 腰仙部脊髄神経の前枝は、上下の枝で神経叢(腰神経叢、仙骨神経叢)を作る。 腰神経叢(T12~L4)、仙骨神経叢(L4~S1)は、体幹の側面、臀部、下腹部、陰部、大腿の前・側・後面の知覚と運動を支配。
※後枝は、体幹の後面(皮膚)の知覚と運動(主に脊柱起立筋~臀部)を支配するため、腰痛とはなっても、下肢痛とはならない。
治療点(刺鍼点)は志室(L2-L3棘突起間外方1.5寸)の外側(外志室)。この部位の深層に腰神経叢がある。
〇下部腰椎の前枝痛、後枝痛
●下部腰椎の後枝興奮により、同神経の走行部位である臀部側面~大腿側面に掛けて痛みが放散する。
● 下部腰椎の前枝興奮により 、いわゆる坐骨神経痛が起こる。 L4障害→下腿内側、L5障害→下腿外側に痛みがでる。
治療点は、L5レベルでの一行刺鍼。
〇仙腸関節異常
仙腸関節異常による痛みは、仙腸関節付近だけでなく、大腿前面、下腿前面、下腿後面にでることが多くあります。治療としては、仙腸関節(近辺骨上)に指鍼します。
〇下肢の神経絞扼障害
下肢痛(坐骨神経痛)には、腰痛にともなうもの(椎間板ヘルニアや椎間関節性腰痛からの放散痛などの影響によるもの)と腰痛を伴わない下肢痛(腰痛)だけのものがあります。腰痛がなくて、下肢痛があるということは、腰椎以下の部位で神経がストレスを受けていることが考えられ、これには上記の仙腸関節異常の他、梨状筋症候群、浅腓骨神経痛などがあり、梨状筋症候群であれば大腿~下腿に、 浅腓骨神経痛 であれば下腿のみに痛みがでます。
理学検査である梨状筋を伸張させるボンネットテストは、同筋が硬いと健常者であっても痛みが出るので、健側と比較します。
この場合の治療は、 梨状筋症候群なら 梨状筋、 浅腓骨神経痛なら浅腓骨神経の始まりの部位である、腓骨頭直下の陽陵泉が刺鍼点となります。
〇股関節異常
下肢の絞扼障害(梨状筋症候群)や股関節異常は臀部や股関節周囲や下肢に痛みは出るものの、腰痛となることはありません。
〇脊柱管狭窄症
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