上腹部に痛みがあったら

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上腹部の臓器

上腹部には、胃、十二指腸、すい臓、肝臓、胆のうなどの消化のための臓器があります。上腹部(心窩部)に痛みがあったら、これらの臓器が何らかの病変を起こしている可能性があります。

内臓の痛みの分類

上腹部の痛みは、内臓痛、関連痛、体性痛に分けられます。同じ臓器の疾患でも、その後の機序の違いによって様相が変わってきます。

〇体性痛

体性痛は腹膜や腸間膜の炎症で、非情に強く痛みます。このようなときは、病院に行く必要があります。痛む場所は限局性で鋭く痛みます。痛みを脳へ伝える神経線維は脊髄(体性)神経のAδ線維です。

〇内臓痛

内臓痛は、腹部正中が痛みます。これは腹腔神経叢がまとめて痛みを伝達するためです。内臓の痛覚受容器は比較的少なく、痛みの局在が悪い(痛みの部位がハッキリしない)ために、純粋な内臓痛は、上・中・下通程度の部位感しかありません。また伝達神経は交感神経C線維のため、痛みの種類は鈍痛となります。 鈍痛以外にも交感神経の反応として、局所に皮膚のざらつき、冷え、発汗などが見られます。

〇関連痛

内臓痛がひどくなると、脊髄神経側に痛みがあふれて、病変のある臓器と同じレベルの皮膚領域に痛みを感じるようになります。これを関連痛(ヘッド帯)といい、腹部や背部のいろいろな所(胃なら左側、肝臓や胆のうなら右側)が痛み(限局性で鋭痛)ます。伝達神経は体性痛と同じく脊髄(体性)神経の Aδ線維 です。 このため純粋な内臓痛に比べると鋭く痛み、筋性防御といって局所の筋肉が硬くなる(コリ、硬結)などがみられます。

体性痛と関連痛には筋性防御がみられます。筋性防御とは、痛む部位に一致して生ずる筋の限局性の緊張のことで、患部を外的刺激から守るための反応です。また体性痛には、指で腹壁を押圧し、急に指を離すと一過性に腹痛が強くなるブルンベルグ兆候がみられます。

心窩部痛

心窩部とはみぞおち辺りのことです。内臓病変の初期症状として、心窩部に非限局性の腹痛を訴えます。これはヘソより上の腹部内臓病変の「内臓痛」は腹腔神経叢が、まとめて痛みを伝達するためです。先に述べましたように、内臓痛が進行すると関連痛が生じ、関連痛部位の痛みの方を強く感じるようになります。関連痛で心窩部痛を起こしやすいのは、急性慢性の胃十二指腸疾患とすい臓疾患。すい臓疾患は背部痛も起こります。

①急性・慢性胃炎

胃腸粘膜の炎症は食欲不振となると同時に、胃粘膜を刺激されることにより、心窩部痛、悪心嘔吐が起こります。

②胃・十二指腸潰瘍

潰瘍部が刺激され、胃腸壁が痙攣を起こします。これにより心窩部痛。悪心嘔吐を起こします。

③慢性膵炎

膵臓は食べ物を消化吸収するためのインスリンを分泌するため臓器で、膵臓が持続的に炎症を起こすものが慢性膵炎です。炎症によって破壊された細胞が線維化( 組織中の結合組織が異常増殖する現象)し、硬化することで、膵臓本来の機能が失われます。インスリンの分泌低下により高血糖となり、膵管が閉塞することで上腹部・背部に痛みを起こします。 慢性膵炎の原因の多くは、アルコールです 。

右季肋部痛

季肋部とは肋骨の下縁部のことで、胆のうや十二指腸・肝臓などの病変は右の季肋部に痛みとして表れます。

〇胆のう症

胆のうの疾患には、胆石症、胆のう炎、胆道ジスキネジーがあり、胆のう症とはこれらの総称です。胆道ジスキネジーとは、胆石や胆のう炎がないのに、 胆嚢に病気があるかのような感じるもので、自律神経失調症とされています。胆のうは、脂肪を分解するための胆汁が収められていて、食事の際に溜めておいた胆汁を分泌します。脂肪の多い食事に胆のうが痙攣を起こしたり、過労や精神的ストレスによって、胆道の運動機能の失調により痛みや不快感を生じ、胆汁が鬱滞して胆管が閉塞することで黄疸がでます。胆道に病変が及ぶと、背部(右肩~肩甲間部)にも放散痛が現れます。 急性胆のう炎の95%は胆石によるものと考えられています。

〇慢性肝炎

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、あまり痛むことがありません。肝臓が痛むのものとして肝硬変や末期の肝臓ガンがあります。

肝炎を起こし、それが門脈に波及し門脈がうっ血すると、消化管が機能不全となり、上腹部痛、食欲不振、悪心嘔吐などが起こります。

※門脈:胃や腸から栄養に跳んだ血液を集めて肝臓に送り込む静脈

左季肋部

〇胃疾患 → 心窩部痛に準じます。

上腹部痛を鑑別するための基準は次のようなものです。

・暴飲暴食や飲酒後 → 急性胃炎

・脂肪摂取後しばらくして → 膵炎、胆のう炎

・アルコール摂取後しばらくして → 膵炎

上腹部痛が起こる原因

上腹部の痛みや不快感の原因は以下の通り。

①肉体的ストレス ②精神的ストレス 

遺伝的素因を除けば、結局のところ、この2つが大半を占めます。肉体的ストレスは食べ過ぎやアルコールの過剰摂取ですが、体を壊してまで食べてしまう背景には精神的ストレスがあります。

※ウィルスによるものもあります。

上腹部痛に対しての鍼灸治療

急に発症した、痛みが激しい、悪心嘔吐がある、発熱、といった症状が現れている場合、すみやかに病院に行ってください。鍼灸治療の対象になるのはそれ以外ということになります。鍼灸院に訪れる人は、痛みは激しくないが、膨満感、食不振、便秘、疲労などの多くの症状を併せ持つという特徴があります。

馬込沢うえだ鍼灸院

kiichiro

鍼灸師。東洋医学について、健康について語ります。あなたの能力を引き出すためには「元気」が何より大切。そのための最初の一歩が疲労・冷え症・不眠症をよくすること。東洋医学で可能性を広げられるよう情報を発信していきます。馬込沢うえだ鍼灸院院長/日本良導絡自律神経調整学会会員/日本不妊カウンセリング学会会員//日本動物愛護協会会員

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