ツボ押しで歯の痛みは止まるのか?
「ツボ」とは皮膚表面上に点在している、体の不調が表に表れる点(正確には面)であり、またそこに刺激を与えることで体調がよくなったり、痛みが和らいだりする治療点でもあります。東洋医学の経絡上の経穴は多くのものが、解剖学的に神経細胞が多く集まっているところに一致しています(すべてではありません)。一般の方向けの本などには、この症状にはこのツボといった感じで紹介されていることが多いですね。
NHKの番組でツボのことをやっていた
一昨日NHKの朝の番組で東洋医学の特集があり、その中でツボについての話がありました。そこで紹介されていたツボのうちの一つが「合谷」。手の親指と人差し指が交わったところの人差し指側、押してみて反応のある(強く押すと痛い)ところが合谷です。番組では、ここを押せば歯の痛みが治まるもしくは和らぐということで、誰でも気軽にできるというものでした。押し方は5秒ほど押したら、一拍おいてまた5秒、それを3回繰り返す。強く押せばいいわけではなく、指が触れるくらいでも十分に効果がありますとのこと。
もし虫歯だったら
痛みの背景に虫歯があったのなら、いくら合谷を押したからといって痛みはなくならないと思います。もし虫歯があるのなら虫歯の治療をすることです。仮に(実験的に)合谷に鍼をうってパルスを流したらどうか?ひょっとしたら歯の痛みが抑えられるかもしれません。しかし虫歯が治療されない限り、痛みはまたぶり返すでしょう。第一そんなことは患者さんは自分ではできないし、歯が痛いからといって歯医者ではなく鍼灸院に行く人はいません。虫歯があるわけではないのに歯が痛む、というか疼くようなときは確かにあります。これは体が疲れているときの一症状ですから、鍼灸も含めて全身の疲れを取ることをしたほうがいいです。そのように考えると、日常生活上で、歯の痛みを取るために合谷を押すというシチュエーションはほとんどないことになります。症状というのは、その人の弱い所に出ますから、疲れると虫歯があるわけでもないのに「歯が痛む(疼く)」という人が、日頃から養生のために「合谷を押す」というのは一つの選択肢としてはいいでしょう。
ツボを効果的に使う
「合谷を押せば歯の痛みが止まる」とだけ聞いた人が、実際に歯が痛いときに合谷を押して「ああ、よかった、痛みが治まった」などということがあるでしょうか?「合谷を押しても痛みは治まらないんだ」となることがほとんどで、ひいては「ツボなんて効果ないんだ」と思われてしまうかもしれません。だとすれば一人の鍼灸としてとても残念です。健康のためにストレッチをやるように、ツボを押し、予防養生に役立てましょう。
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