食欲は正常か?
食欲は健康を推し量るバロメーター、よく食べる人、少食な人、さまざまですが、その人にとっての正常な食欲というものがあります。食欲不振や異常なほどの食欲旺盛は、どちらも健康ではありません。
食欲不振
食欲不振の要因となるのが胃腸疾患(末梢性因子)、心配事や悩み事(中枢性因子)など。どこかに痛みがあったり、発熱などのときも食べたくなくなります。
〇胃腸疾患
食欲不振で最も多いのが消化器疾患です。胃や腸に病変がある場合、体に対して有害となる飲食を避けるために食欲不振となります。ストレスによりヒスタミン分泌過剰となり、胃液の分泌を増大させ、胃液の粘膜を破壊します。胃酸の分泌には、アセチルコリン、ガストリン、ヒスタミンという3つのホルモンが、胃酸分泌抑制にはセクレチン、GIP(胃抑制ペプチド)が関与しています。
●胃酸分泌のメカニズム
胃酸の分泌は自律神経とホルモンとによって調整されています。
①食事を取ろうとする → 脳からの刺激が迷走神経(副交感神経)に伝わる → 神経末端よりアセチルコリン分泌 → アセチルコリンが胃壁細胞のムスカリン受容体に結合 → 胃酸分泌
②食物が胃に入る → 幽門腺にあるガストリン細胞からガストリンが分泌される → ガストリンは胃壁細胞のガストリン受容体に結合 → 胃酸分泌
③ガストリンは肥満細胞などを刺激 → ヒスタミン放出 → 胃壁細胞のH2受容体に結合 → 胃酸分泌
ストレスによって過剰に分泌されたヒスタミンは胃の粘膜を破壊し、胃炎や胃潰瘍を生じさせます。これにより消化力が低下します。
※このとき、大量に分泌されたヒスタミンが一過性に食欲を増進させることがあります。ストレスから食欲が過剰になることがあるのはこのため。過食に陥る人は脳内物質であるドーパミンの分泌がすくないため、いくら食べても満足することができません。また食べている最中にエンドルフィンが分泌されることで、食欲を抑えられなくなるといったケースもあります。
●食欲抑制のメカニズム
ストレスは交感神経を働かせ、胃粘膜血流を減少させることによって胃液分泌を減少させます。また 十二指腸粘膜 から分泌されるセクレチンというホルモンや胃抑制ペプチドが胃液分泌を抑制させます。
〇心配事・悩みごと
大脳皮質が受けた心配や悩みといったストレスが視床下部に影響して食欲不振となります。
食欲不振に対しての鍼灸治療
食欲不振の原因が、胃など上部消化器に機能低下によるもの、心配や悩みごとなどが主となるもの、どちらであっても、改善すべき点を観察した上でアプローチすることが大切です。
東洋医学的な鍼灸治療としては、脾胃に対しての治療だけではなく、心肝や気血の不調を考慮し治療してく必要があります。気や血が不足していると、食欲不振だけではなく他の症状が現れたり、病状が長引く傾向にあります。