コロナ鬱、コロナ不眠、コロナ疲れ
こころや体が疲労している
将来が心配になるような話、気持ちが暗くなる話を耳にすることが、とてもとても多い昨今です。短期的なものであれば気合と根性で跳ね返すことができても、長期戦になればジワジワとエネルギーを奪われ、気が付けばこころや体が疲労してしまっています。
病の起こるは、鬱によること多し
「凡(およ)そ病の起こるは、鬱によること多し」の言葉があるように、精神的な要因による疾患は非常に多くあります。東洋医学(中医学)でいう鬱証は西洋医学の「鬱病」より範囲が広く、自律神経失調症、心身症、更年期障害、不眠症などの多くの病症を含みます。また、鬱証から他の病気を併発したり、反対に他の病気に鬱証が不随することも少なくありません。表面的な症状にのみ捉われることなく治療を行うには、鬱証の弁証論治がとても重要です。
古典に「鬱なる者は滞りて不通の意なり」とあるように、鬱とは、何かが滞って詰まっている状態をいいます。何かとは何か?ここでは気、血、水のいずれかであり、鬱証はすべて「気」の滞りから始まります。ストレスによって気滞・気鬱となり、その後に血や水が巡り、それにより形成された瘀血や痰飲が、二次的・三次的にさまざまな病を引き寄せます。
肝気の鬱滞からノイローゼ
五行論では、「怒」の感情は「肝」と深い関係にあります。怒の感情(精神的ストレス)によって、肝気が主っている疏泄や条達が阻害され、肝気鬱滞となります。疏泄・条達とは、のびやか、淀みのない、という意味です。
肝気鬱滞の状況が続くと、肝は熱を帯び「肝火上炎」となり、イライラして、気持ちが落ち着かなくなります。肝火が心に及ぶと「心肝火旺」となり、寝つきが悪くなる、眠りが浅いなど睡眠に問題が生じます。自律神経でいえば、交感神経過多の状態です。
そのうちに、体内の陰が減って「陰虚」となり、陰に対して火が旺盛である「陰虚火旺」となり、元気がないのにイライラするという状態になります。それが長期に渡ると、燃料不足から火の量も少なくなり、場合によっては心神不寧といって鬱病、ノイローゼ、神経症を呈します。症状としては、表情が乏しい、すぐに疲れる(常に倦怠感を感じる)、何をするのも億劫、朝起きられないなどです。
気血両虚、陰陽両虚
動物は睡眠が十分に取れていることで、日中にしっかりと活動することができます。陰陽論で考えれば睡眠が陰で活動が陽、ロウソクでいえばロウが陰で、炎が陽にあたります。炎は陰であるロウからエネルギーを供給され燃えることができ、炎が大きく燃えるということは、ロウが小さくなることを意味します。ここで陰を補充しなければ、いずれは炎も小さくなってしまいます。これは、睡眠を削って働いても、高いパフォーマンスは長くは続かないということです。
気が巡ることで心身は健やかでいられます。気を使わなければならないストレス過多の状況は気を消耗させ、気の消耗にともなって血も減ってきます。これを「気血両虚」といいます。気は陽の、血は陰の性質をそれぞれもち、気血両虚が進行すれば「陰陽両虚」となり、これは生命力の非情に低下した状態です。
気を補う、血を補う
どのような病気であっても早めに対応すれば、大事に至るのを防げます。鬱証も同様であり予防もしくは改善のためには、常に気の流れ確保しておくことが重要です。しかし気や血ひいては陰陽が虚している状態は、体内を巡ろうにもそれだけの量もなければ、パワーもありません。もし、鬱症やそれにともなう症状がでるようになってしまったら、時間をかけて良くしていかねばならず、そのためには、規則正しい生活、適度な運動、必要な栄養摂取などにしっかりと注意を払い、見直すべきとろころは見直します。
●規則正しい生活
陰陽のリズムからしても、夜に寝て、日中は活動することが重要です。自然の営みに反した不規則な生活は、登坂を登りながら前に進むようなもので、非情にエネルギー効率の悪いものです。
●適度な運動
規則正しい生活の基本は、夜の睡眠と昼の活動です。しかし不眠症は眠ろうとしても、うまく眠ることができません。この場合、陰(睡眠)ではなく、陽に働きかけます。つまりに適度に運動するということです。
鬱と鍼灸
鍼灸によって的確にツボを刺激することは、気や血の巡りをよくし、肝や心を通常の状態に戻すことに有効です。自分ができる養生と合わせて鍼灸治療をお受けになれば、回復を早めることができます。