背中が痛い。筋肉痛か?内臓痛か?それ以外か?
背中には内臓病変があらわれる
肩こりと同様に、背中の痛みは筋肉の疲労によって生じます。それだけでなく、背中の痛みは骨粗鬆症による脊椎の圧迫骨折や内臓の不調からくる場合もあります。
内臓の病変が背中に表れる場合、「鈍痛」であっても、その部位を押すことで「鋭い痛み」として感じることがあります。この部位を「圧痛点」といって、どの内臓の不調なのかを判断するための材料とすることができます。
例えば脊椎の両脇にあらわれる「脊椎側点」を押したときの痛みは、その高さにある内臓の病変とほぼ一致します。背中のほぼ真ん中にある「ボアス点」は胃潰瘍、背中の右の方にある「モーバン点(小野寺胆石圧痛点)」や背中の右下でお尻の上の方にある「小野寺臀部点」の圧痛は、胆石時の指標となります。ちなみに背中より少し下の腰の辺りにでる痛みは骨盤内臓器の異変を表します。
筋肉痛と内臓痛の特徴
背中の痛みが、単なる筋肉の疲労によるものか、内臓病変からのものかの判別の目安は次のようなものです。
●筋肉痛:①原因として思い当たることが比較的はっきりしている。
②体を動かすことで痛みがひどくなる。
●内臓痛:①これといって思い当たることがない。
②動かないでいるときも鈍痛がある。
痛みや違和感が長期にわたるようであれば、検査をおすすめします。
検査をして、その後
検査をして何か病気が見つかった場合、その病気に対処します。もしこれといった病気が見つからなかったら?病気が見つからなかったんだから「一安心」ではあります。しかし「ではどうすればいいのか?」となります。さほど気にならないのであれば、放っておくというという選択肢もあるかもしれません。しかし診断名がつくようなものでなくても、「痛み」という異変が表れているわけですから、見過ごしてしまうことなく養生につとめ、「未病」の内に治しておくのが賢明といえるでしょう。※未病とは、今のところ病気ではないが、そのままにしておくと病気になってしまう可能性が高い状態
どちらにも当てはまらない
背中の痛みで内臓の検査をしたが何も見つからず、捻る、ぶつけるなどこれといって思い当たることもない場合があります。このようなとき、脳内で痛みの閾値が下がっていることが考えられ、線維筋痛症などもこれに該当します。
背中の痛み
それが筋肉痛であっても、内臓由来のものであっても、またどちらにも当てはまらなかったとしても、本人の養生法に大きな違いはありません。背中の痛みとなって表れる内臓病変には、心臓や肺などの疾患などがありますが、胃、すい臓、胆のうなど消化器の不調である場合が少なくありません。
〇食べ過ぎ飲みすぎに注意
自律神経によって支配されている胃は、胃に物(飲食物)が入ってくると、これを拒むことがありません。どんなに疲れていても「消化」という自分の仕事をまっとうしようとします。しかし仕事量が多すぎると、どうしてもオーバーワークになり、これにより消化不良を起こしたり、胃潰瘍ができたりします。急性的処置として嘔吐することもあります。
〇精神的ストレスをためない
精神的ストレスによって、消化器などの内臓はダメージを受けます。東洋医学的に考えれば、精神的ストレスによって生じる消化器の異常を「肝脾不和」といいます。肝とは、五臓の中でストレスを最初に受け止める臓腑です。肝で処理できないほどのストレスは他の臓腑へ悪影響を及ぼし、その負のエネルギーが脾(消化器)に向いてしまったものが肝脾不和です。ストレスを早めに解消してこれを防がなければなりませんが、食べたり飲んだりすることでストレスを解消しようとすると、逆効果になることもあります。胃など消化器に負担をかけないで、ストレスを解消法しましょう。
〇冷え症を解消する
慢性的な冷えは、自ら体を温めるエネルギーが不足している「陽虚」の状態です。自律神経的にみると交感神経が過剰に働き血管が収縮、血流が滞っています。各臓器、筋肉等に酸素と栄養が運ばれず、老廃物も溜まったままになり、これでは傷ついた組織の修復が行われません。日常生活の中で、冷やさない、温めてかつリラックスするということを怠らないよう注意しましょう。
〇質の良い、時間的にも十分な睡眠をとる
寝ることによって自律神経が調い、また体のいろいろな組織を修復するためのホルモンも分泌されます。寝るということはとても大切なことで、質が悪く、量的にも不足した睡眠であれば、体を回復させるのは難しいものになってしまいます。
背中の痛みと鍼灸
先に述べましたように背中の痛みには、筋肉疲労によるもの、内臓由来のもの、圧迫骨折、線維筋痛症など痛み閾値の低下によるものなどがあり、圧迫骨折以外のものに鍼灸は有効です。体内のエネルギー物質である気血の巡りをよくする、自律神経やホルモンバランスを調える、閾値を正常にするといったことで、背中に痛みを生じさせている要因に働きかけ、体調を良好へと導きます。また、ベッドに入っても寝付けない、眠りが浅いというとき、鍼灸の力を借りることで不眠症を緩和させることができます。また、鍼灸により「陽の気」を活発にすることで、冷え症も改善させていくことが可能です。