自律神経失調症を東洋医学ではどうとらえるか?
自律神経の失調は陰陽の失調
自律神経の失調を東洋医学では「陰陽の失調」ととらえます。自律神経の失調により体調がすぐれないのであれば自律神経を調える必要があります。東洋医学でも、考え方は同じです。自律神経は常に活動の中でそのバランスを保っています。体調を崩し、それが症状として表れるほどであれば、体内陰陽を元のバランスの取れた状態に戻さなくてはなりません。
自律神経とその症状
自律神経は、生命の営みのために自分の意思とは関係なしに、常に働いている神経のこと。全身に張り巡り、心拍、血圧、消化、吸収、発汗、不随意筋の活動などに関わっています。自律神経は緊張・興奮状態のときに優位になる交感神経と、リラックスしているときに優位になる副交感神経から成っていて、自律神経失調症とされる症状には、頭痛、肩こり、動悸、息切れ、不眠、便秘、下痢、冷え、のぼせ、イライラ、倦怠、憂うつ感、無気力、頻尿、食欲不振、月経の乱れ、目の疲れ、口の渇き、喉の異物感など、実にさまざまあります。しかし、これらの症状があればすべて自律神経失調症というわけではなく、これといった原疾患が見当たらない場合に自律神経失調症と判断されます。
八綱弁証
東洋医学の背景にある考え方が陰陽論です(他に五行論があります)。陰陽論とは、この世ものはすべて陰と陽の二面性をもつというもので、活動、温、春夏、上昇などが陽、休養、冷、秋冬、下降などが陰に属し、自律神経なら交感神経が陽、副交感神経が陰にあたります。つまり、自律神経失調症とは陰陽の失調ということができます。
東洋医学において、患者さんの体がどうなっているのかを把握することを「弁証」といいます。八綱弁証とは八つの観点から状態をみていこうというもので、表・裏、虚・実、寒・熱、陰・陽がその八つ。陰と陽の観点から病態をとらえることも大切ではありますが、表裏、虚実、寒熱、さらには臓腑や気血津液の状態をみていくことで、より効果的な治療が可能となります。
自律神経失調症の2大原因
自律神経が乱れる最大の原因はストレスと不規則な生活です。
●ストレス
ストレスには、人間関係や環境の変化などの外的要因、性格、体質といった内的要因があります。東洋医学では、ストレスによって体調不良が生じたとき、五臓の「肝」に目を向け、いかに肝の気の流れをよくするかといったことを考えます。しかし現代では、暑さや寒さなどの環境から生じる病気よりも、人間関係のトラブルなどの精神的ストレスから病気に至るケースが多くあり、心も含めた病態の把握が重要です。
●不規則な生活
昼夜が逆転したような生活は自律神経を乱します。夜行性ではない人間がこのような生活を続けると、自分でも気が付かないうちに体にダメージが蓄積します。これは向かい風の中を歩くようなもので、非情にエネルギーを消耗します。
自律神経を調えるために自分でできること
●規則正しい生活
自律神経を調える(東洋医学的にいえば、体内の陰陽バランスを調える)ためには、まずは規則正しい生活を送るようにします。これは陽の時間(昼)には活動して、陰の時間(夜)には寝るということで、夜更かしをしているのであれば改める必要があります。しかしストレスなどが原因で眠ろうにも眠れないこともあります。そのためには、適度に運動をして、陽の巡りをよくしましょう。
●陽の巡りをよくする
陽の巡りをよくするとは、体を冷やさない、温めるということです。前述の八綱弁証のうちの一つが「陰陽」の観点から体の状態を把握するというもの。陰が虚して入れば陰を、陽が虚していれば陽を補うのが基本です。しかし、自律神経失調症と判断されるものの多くは、一見「実」の様相を呈していても、その本は「虚」です(これを本虚標実という)。つまり、口が渇く、喉が渇く、のぼせる、といった場合であっても体を冷やしてはいけません。
●適度に運動する
夜に眠れて、朝に目が覚めるということが自律神経失調症をよくしていくための基本です。グッスリ眠ることができ、朝はスッキリ目が覚めるのであれば、自律神経失調症はかなり改善してきているといえます。そのような状態にしていくために、適度な運動は欠かせません。
酸いもあり、甘いもあるのがこの世というもの。自律神経が乱れると甘いものばかりを欲しがり、自律神経が正常に働いていれば、酸っぱいものでも、それなりに美味しいと感じることができます。つまり、いろいろな価値観を許容できるなる、といったら言い過ぎでしょうか。
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